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心理カウンセラーの目線:社会問題

心理カウンセラーから見る今の社会問題

プロフェッショナル心理カウンセラー 金崎健二

はじめに

現代社会は目まぐるしく変化し、人々の生活は便利になりました。しかし、その一方で「生きづらさ」や「心の不調」を抱える人が増えているのも事実です。SNSを覗けば他者との比較に疲弊し、働き方改革の影で職場ストレスが蓄積し、家庭内でも孤独を感じる親や子どもが少なくありません。

私は心理カウンセラーとして日々多くの相談を受けていますが、そこから見えてくるのは「社会構造」と「個人の心の在り方」が複雑に絡み合う姿です。本記事では、今私たちが直面している社会問題を心理カウンセラーの視点から整理し、その背景と改善のヒントをお伝えしていきます。


1. 孤独と分断の時代

1-1 SNSの光と影

SNSは人と人をつなぐ素晴らしいツールですが、同時に「孤独を深める要因」ともなっています。フォロワー数や「いいね」の数で自分の価値を測ってしまい、他者と比較して自己肯定感を下げてしまう方が後を絶ちません。

心理学ではこれを「社会的比較理論」と呼びます。人は本能的に他者と自分を比べ、自分の位置を確認します。しかし、その比較が過度になると「私は劣っている」「自分には価値がない」という思考に陥ってしまうのです。

1-2 コミュニティの喪失

昔は近所付き合いや地域のつながりがありましたが、都市化や核家族化によって人との関わりは希薄になりました。困ったときに「ちょっと助けて」と言える相手がいないことが、孤独感をさらに強めています。

心理カウンセリングに訪れる方の中には、「家族にすら自分の悩みを話せない」と言う人が少なくありません。家庭や地域が「心の避難所」として機能しにくい現代だからこそ、孤独は社会問題となっているのです。


2. 職場ストレスとメンタルヘルス

2-1 働き方改革の副作用

働き方改革によって残業時間は減ったものの、「効率的に成果を出さねば」というプレッシャーが強まり、逆に精神的な負担が増したという声も聞かれます。

またリモートワークの普及により、時間の柔軟性が得られる一方で、オンとオフの切り替えが難しくなり「常に働いている感覚」に苦しむ人もいます。

2-2 管理職の孤独

管理職層の相談も増えています。「部下のメンタルを守らなければならない」と思う一方で、自分の悩みは吐き出せない。上からの圧力と下からの不満の板挟みになり、心がすり減ってしまうのです。

こうした「管理職の孤独」は表に出にくいため、組織として支援体制を整えることが急務です。


3. 子育て世代の悩み

3-1 子どもの発達と母親の孤立

育児相談でよく耳にするのは「子どもの成長に遅れがあるのでは」という不安です。インターネット上には発達に関する情報が氾濫しており、過剰に心配してしまう親が増えています。

また、地域や親族からのサポートが少ない環境では、母親が孤立しやすくなります。SNSではキラキラした育児風景が流れてくる一方で、「自分はちゃんとできていない」と罪悪感を抱いてしまうケースが多く見られます。

3-2 子どもの心のSOS

学校現場からは不登校の増加が報告されています。子どもたちもまた社会の縮図を生きており、友人関係や学業へのプレッシャーに押し潰されそうになっています。

子どもが発する「学校に行きたくない」という言葉の裏には、必ず心のSOSがあります。それを「甘え」として切り捨てず、寄り添い、耳を傾けることが大切です。


4. 格差と不安定な生活基盤

4-1 経済的格差の心理的影響

非正規雇用やワーキングプアといった不安定な働き方は、将来への不安を強め、メンタルに大きな影響を及ぼします。心理学では「マズローの欲求段階説」がありますが、生活の基盤である「安全の欲求」が満たされないと、自己実現どころではありません。

4-2 社会的排除と心の病

経済的困難は「社会的排除」を引き起こします。教育や医療、文化活動への参加が制限されると、人は「自分は社会に必要とされていない」と感じやすくなります。その結果、うつ病や依存症などのリスクが高まります。


5. 心理カウンセラーができること

心理カウンセラーは魔法使いではありません。社会構造そのものをすぐに変えることはできませんが、目の前のクライアントが「安心して本音を話せる場」をつくることはできます。

  1. 傾聴と共感 ― 話を遮らず、評価せず、ただ受け止める

  2. 自己理解のサポート ― 自分の感情や思考のパターンに気づく

  3. 行動の選択肢を広げる ― 「こうしなければならない」を「こうしてもいい」に変える

これらを積み重ねることで、人は少しずつ回復していきます。そして小さな変化が社会全体にも波及していくと信じています。


6. 今後の社会に必要な視点

社会問題の解決には「心のケア」と「社会的支援」の両輪が欠かせません。

  • 学校教育における心の学び(SEL: Social Emotional Learning)の導入

  • 企業でのメンタルヘルス研修や相談窓口の充実

  • 地域コミュニティでの支え合いの仕組みづくり

  • カウンセリングや心理支援の利用ハードルを下げる

「心の問題は特別な人だけのものではなく、誰もが抱える可能性がある」という認識を広げることが必要です。


7. まとめ ― 心理カウンセラーからのメッセージ

現代の社会問題は複雑で、一人の力で解決できるものではありません。しかし「誰かに話せる」「理解してくれる人がいる」という体験は、人を大きく支えます。

孤独、職場ストレス、子育ての不安、経済的困難――どんな悩みも一人で抱え込む必要はありません。心理カウンセラーは、あなたの「心の居場所」として寄り添います。

Luanaでは、心が少し軽くなる瞬間を一緒に育んでいきたいと願っています。


おわりに

社会問題はすぐには解決できません。しかし、私たち一人ひとりが「心の声に耳を傾ける」ことから変化は始まります。もし今、あなたが生きづらさを感じているなら、その気持ちを言葉にしてみてください。そして必要なら、どうか専門家の力を借りてください。

それは弱さではなく、自分を大切にする勇気なのです。

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