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ブログ 【我慢するということ】

我慢しなさいのこわさ

プロフェッショナル心理カウンセラー 金崎


はじめに

「我慢しなさい」
この言葉を一度も言われたことがない人は、きっと少ないでしょう。親や先生に叱られるとき、友達とケンカしたとき、欲しいものを我慢させられたとき…。私たちは子どもの頃から何度も「我慢しなさい」と言われながら成長してきました。

確かに、社会の中で人と関わりながら生きていくには「自分の欲求を抑える力」も必要です。ですが、それが行きすぎて「自分の気持ちを常に押し殺すクセ」となってしまったら…。その代償はとても大きいものになります。

カウンセリングの現場にいると、この「我慢しなさい」という言葉が、大人になった今でも人の心に深い影を落としていることを強く感じます。今日はその「こわさ」について、一緒に考えてみたいと思います。


「我慢」は感情を押し殺すこと

人間は本来、とても素直な存在です。悲しいときには泣き、嬉しいときには笑い、嫌なときには怒る。それが自然な感情の表れです。

しかし「我慢しなさい」と繰り返し言われ続けると、子どもはこう学んでしまいます。

  • 泣いたらいけないんだ

  • 怒ったら嫌われるんだ

  • 嫌だと言ったら迷惑をかけるんだ

その結果、「自分の感情を出すこと=悪いこと」と思い込み、感情を抑え込むようになります。これは心理学でいう「感情の抑圧」。心の奥にため込んだ気持ちは消えるのではなく、溜まり続けていきます。


「いい子」でいることの代償

「我慢しなさい」と言われて育った人は、周りから「いい子」と評価されやすいです。親の言うことをよく聞き、先生にも従順で、トラブルを起こさない子。大人から見れば扱いやすい存在です。

ですが、その「いい子」の裏側には、こんな感情が潜んでいます。

  • 本当は嫌なのに笑って頷いてしまう

  • 頼まれると断れない

  • 苦しくても「大丈夫」と言ってしまう

つまり「いい子」でいるために、自分の気持ちを犠牲にしているのです。

大人になってもそのクセは続きます。職場で仕事を抱え込みすぎる、人間関係で本音を言えない、家族の中でも自分の気持ちを後回しにする…。そうやって少しずつ、心が疲弊していくのです。


我慢の積み重ねが引き起こす不調

「我慢グセ」は長期的に見ると、心と体に不調を引き起こします。

心のサイン

  • いつも疲れている

  • イライラが止まらない

  • 気分の落ち込みが続く

  • 急に怒りが爆発する

体のサイン

  • 肩こりや頭痛

  • 胃腸の不調

  • 不眠

  • 免疫力の低下

「なぜかわからないけどしんどい」という相談の背景には、長年の「我慢の蓄積」が隠れていることが少なくありません。


我慢と忍耐のちがい

「我慢」と「忍耐」は似ているようで違います。

  • 我慢 … 自分の気持ちを押し殺して耐えること

  • 忍耐 … 自分の目的のために選んで耐えること

たとえば資格試験のために遊びを控えて勉強するのは「忍耐」です。自分で選んでいるから、達成感や自信につながります。
一方、嫌な仕事を「断ったら嫌われるから」と続けるのは「我慢」。自分を押し殺しているだけなので、心身を消耗させてしまいます。


事例:断れない女性のケース

ある30代の女性がカウンセリングに来られました。職場では同僚の仕事をいつも引き受け、友人からの誘いも断れず、家庭でも「いい妻」「いい母」でいようと必死に頑張っていました。表面上は充実しているように見えても、心身は疲れ切っていたのです。

彼女の口癖は「断ったら悪いから」。幼い頃から「お姉ちゃんなんだから我慢しなさい」と言われて育ち、自分の欲求よりも他人を優先するのが当たり前になっていました。

カウンセリングを重ねる中で、彼女は少しずつ「嫌なものは嫌と言っていい」と気づきました。勇気を出して友人に「今日は行けない」と伝えたとき、ものすごく肩が軽くなったそうです。小さな一歩ですが、彼女にとっては大きな解放でした。


我慢しないための練習

長年の習慣を変えるのは簡単ではありません。ですが、次のようなステップを意識すると少しずつ変わっていけます。

  1. 自分の気持ちを感じる練習
     「私は今どう感じている?」と自分に問いかける。

  2. 小さな自己主張をしてみる
     「砂糖は入れないでください」と注文するなど、些細なことで練習。

  3. 紙に書き出す
     言えない気持ちは、まず文字にして「可視化」する。

  4. 安心できる場で話す
     信頼できる人やカウンセラーに本音を伝えてみる。


子育てにおける工夫

子どもに「我慢しなさい」と言わなくても伝えられる方法があります。

  • 「あとでね」:欲求を否定せず、順番を示す

  • 「どうしたい?」:選択肢を与えて考えさせる

  • 「気持ちはわかるよ」:感情を受け止めたうえでルールを伝える

このような言葉がけを続けることで、子どもは「自分の気持ちは大事にされている」と感じ、健やかな自己表現を学んでいきます。


まとめ

「我慢しなさい」という言葉は決して悪意から出るものではありません。けれども、それを繰り返し言われ続けると「感情を押し殺すクセ」がつき、大人になってからも生きづらさの原因となります。

大切なのは「我慢」ではなく「自分で選んで行動する」こと。
心理カウンセリングは、そのための第一歩を支える場所です。

もしあなたが「我慢ばかりでしんどい」と感じているなら、その気持ちに気づいた今こそが変化のチャンスです。自分の気持ちを少しずつ大切にしていきましょう。

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